大国主大神さまに神習ってたまには譲ってみるのもあり

時には譲ってみる

 人間社会で生きていると、揉め事が必ずあります。それこそテレビのチャンネル争い(もう過去のものでしょうか?)のような些細なことから、訴訟沙汰になるような大きな話までざまざまです。

 揉め事は多数ありますが、自分がいつも勝つということはありませんし、いつも得をするわけでもありません。それどころか、自分に何の落ち度もないのに巻き込まれて、一方的に損をすることもあります。そんな時の腹立たしさは、なんとも言えないものがあります。ですが、時には譲ってみるというのもよいのではないでしょうか。

 出雲大社の御祭神である大国主大神さまは苦労して、この日本の国造りをなされます。高天原では神々が相談され、地上は天照大御神の子孫が治めるべきだとして、交渉役としてタケミカヅチ神を派遣されます。
 出雲大社の近くの稲佐の浜に、タケミカヅチ神は剣を立ててその先に座って、この国を明け渡すように要求されます。これに対し大国主大神は自分の代わりに御子神である事代主神とタケミナカタ神に聞いてくださいとお答えされます。事代主神は恐れ多いので譲るべきと答えますが、タケミナカタ神は承服しませんでした。そこでタケミカヅチ神はタケミナカタ神は戦い、タケミナカタ神が敗れ諏訪まで追い詰められ、国譲りを承知します。そして、国譲りの代償として、大国主大神のための壮大な宮殿が建てられました。これが出雲大社の起源と言われています。その後、天照大御神は御孫神であるニニギノミコトを地上に差し向けられました。いわゆる天孫降臨です。
 この話は古事記のものですが、見方によってはちょっと無茶な話にも見えます。突然やってきていきなり譲れというわけですから。日本書紀の一書では少し異なるストーリーが伝わっており、天つ神からきちんと説明して、大国主大神が納得された、という話になっています。

 いずれにせよ、最後まで徹底抗戦してもよかったわけですが、それは選ばれませんでした。もちろん、天つ神が尊いということもありますが、やはり日本の国のために争い事はなるべく避けたいというご意思があったのではないかと思うのです。これはあくまでも神話ではありますが、古代の日本で実際に似たようなことがあり、それを反映しているものではないかと私は考えています。

 この大国主大神の国譲りにならって、揉め事の際に時には自分が譲ってみる、というのはどうでしょうか。もちろん、なんでもかんでも譲れというわけでもありません。例えば夫婦喧嘩は犬も食わない、と言いますが、お互いに言い分はあるわけです。自分の言い分が通らないとイライラしますし、相手が得して自分が損するようだと腹立たしいわけですが、たまには譲ってみましょう。もちろん家庭の平和のためという大義があっての話です。
 他にも自動車を運転していて、他の車が前に割り込んでくる、なんてことはよくあります。無茶されて頭に来ることもありますが、これも落ち着いた心で譲ってみてはどうでしょうか。大国主大神は国を譲られたわけですが、それに比べれば全くたいしたことはありません。頭に来て冷静さを失って事故につながるよりはよいのではないでしょうか。


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<このページの筆者>
 中島隆広 : 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。

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