完璧を目指す
二十年に一度の伊勢神宮式年遷宮では、ご正殿の中に納められる御神宝もすべて新しく作られます。御神宝は装束、鏡、太刀など全部で灼く1500点以上もあります。撤下された以前の御神宝が神宮徴古館に展示されていますが、どれも素晴らしいものです。装飾、彫刻、工芸の見事なこと。また、外宮にあるせんぐう館では御神宝の製作技術が紹介されています。これを見るとまさに当代一流の職人、芸術家が精魂を込めて、完璧を目指して作り上げていることがわかります。
自分も伊勢神宮にお供えするものを作るなら、それくらい頑張るわ、と思われた人もいるかもしれません。それなら一度、今の自分の仕事を御神宝を作りあげる、くらいの気持ちで挑んでみてはどうでしょうか。もちろん、口で言うのは簡単ですが、実際にはなかなか難しいでしょう。日常で行っている仕事は当たり前になりますから、なかなか特別な気持ちにはなれません。それでも、自分の仕事に対して、今まで以上に完璧を目指してみよう、と考えて見ただけでも価値はあります。
御神宝の製作を依頼されるような職人でも、最初からその技術があるわけではありません。経験を積んで少しずつ身につけていくものでしょう。精密な技術や細かい気配りというのは日本人の特性であると思います。できる範囲であっても一人一人が完璧を目指していくことが日本の国を良くしていくことにつながるのです。
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<このページの筆者>
中島隆広 : 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。
★教会長中島の本が出ました!
日本人が伝えてきた心、そして生き方を、神道、神さまの話を中心としつつ、語った本です。相当な時間を掛けて作り上げました。ぜひ一度お読みください。