氏神、産土神、鎮守神について
神棚を新たに設ける人が増えてきたことによって、氏神さまについて知りたいという人が増えてきました。神社本庁が推奨する神棚のお祀りでは、一番目に神宮(伊勢神宮)のお札である神宮大麻をお祀りし、次に氏神のお札、そしてその他崇敬神社のお札をお祀りする、という順番になっています。
氏神とは
現在氏神(うじがみ)とは、自分が住んでいる地域を守っていただいている神さまのことをいいます。歴史的な経緯があったりすることもありますので、自宅から一番近い神社が氏神さまだとは限りません。また山を切り開いた新興住宅地などでは、氏神さまが決まってなかった、ということもあります。神主が常駐している近くの神社で聞くか、あるいは近くにお住まいの人に聞けばたいていわかります。他には各都道府県にある神社庁に聞いてみるという手もあります。
氏の神という字の通り、その昔は氏族(例えば藤原氏とか)の守護神のことを言いました。その一族の祖先の神さまを氏神にすることも多かったようです。これが長い歴史のうちに、あとからお話しします産土神や鎮守神と混同され、結果としてその土地を守る神さまのことを氏神というようになってしまいました。
産土神とは
産土神(うぶすながみ)とは自分が生まれたところ、土地を守る神さまです。広辞苑によると産(うぶ)す+な(地、土を意味する)ということだそうです。
ただ、産土神に厳密に定義があるわけではありません。生まれた場所という考え方もありますし、育った場所という考え方もあります。現在は特に移動、引越が多い時代になりました。妻が出産の時だけ実家に里帰りするということも珍しくありません。また今はほぼ病院で生まれるわけですが、病院と家との氏神さまが違う場合はどちらが産土神なのか、と考えるとわからなくなります。
また、育った場所とすると、ずっと同じところで育った人はいいですが、親の転勤で引越が多かった人には候補がありすぎて難しくなります。
現在の神社界では特に産土神を崇敬しましょう等は言っていませんが、在野の神道好きや占い師で産土神を信仰すべきという人がいるようです。差別化の一種でしょうか。
前述したように何を持って産土神とするのかが難しいですので、結局のところ、自分の生まれ育ちに縁がある場所の神さまを大切にするということでよいのではないでしょうか。
鎮守神とは
鎮守神(ちんじゅがみ)とはある土地、建物をお守りされる神さまです。村の鎮守の神さまの、という歌がありますが、その場合守護されるのは村落全体ですし、屋敷の中にお祀りされる鎮守神はその家をお守りされる神さまになります。
守り鎮めるという字の通り、その昔はわざわざ他から守護の神さまをお呼びしてお祀りしたわけですが、そのうちもともとその地にあるような神社も鎮守神と呼ばれるようになりました。
現在はあまり話には出てきません。企業がお社をお祀りしていることがありますが、その会社または職場を守る鎮守神だと言えるでしょう。
その昔は
人々が今のように頻繁に移動し、都市に集中するようになったのは、せいぜいここ百年以内のことです。それより前は人口の大半は農村に居住していました。田んぼの中にある集落を考えてみるのがよいのですが、各集落の中に小さい神社があり、集落を守る神さまとしてみんなで支えている。人々はその集落で生まれ、育ち、ずっとそこに住む人も多かったわけです。そうすると、氏神と産土神と鎮守神はすべて同じということになります。これらの混同が起こったのも不思議ではありません。
とにかく氏神さまをお祀りしましょう
氏神、産土神、鎮守神とそれぞれ微妙に違うわけですが、まずは氏神さまをお祀りすることが大切です。ぜひ神棚に氏神神社のお札をお祀りしてください。
<このページの筆者>
中島隆広 : 出雲大社紫野教会、教会長
昭和46年京都府生まれ。名古屋大学経済学部卒業、会社員の後、パソコン部品のインターネット通販の会社を起業して経営する。会社売却の後、國學院大學神道學専攻科に入学し、神主となる。
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